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事業アイディア

木材利用

「農林業的暮らし」の楽しさを

林研クラブ・馬路「夢いっぱい」会(徳島県池田町(現・三好市))

自然の中で自らの工夫と努力で農林業的暮らしを創造することを目的に全国の人を巻き込んだ活動を展開する徳島県池田町(現・三好市)の林研クラブ・馬路・「夢いっぱい」会。
今回はその中で炭焼き事業部のユニークな取り組みを紹介しよう。

林研クラブ・馬路「夢いっぱい」会(徳島県池田町(現・三好市))飾り炭

目次

目的は農林業的暮らしを楽しむこと

 「地球の半径は約6380km。その表面わずか2mの厚さの土が植物群落を支え、その植物群落が地球上のすべての生物を支えている」という事実を知り≪デリケートな地球を守ろう≫を合い言葉に、2000(平成12)年4月、県の林業振興事業「山のお宝発見事業」に応募し、農業・漁業とつながる森林づくりをめざし、夢いっぱい会は発足した。
 荒れた山と耕地に手を入れながら、自らの工夫と努力で暮らしを創造する。つまり、日常生活や自然現象の中の疑問や不思議、すばらしさを体験し、社会がどのように変化しようと自分でテーマを見つけ、目的と目標を持ち、自ら手順と方法を考え実行し、結果を評価できる。生き方の基礎を身につけ、池田町の自然の中で農林業的暮らしの楽しさを体験することが一つの目標である。

 しかし、「高齢過疎化の地元だけでは森林保全にも限界、全国の人を巻き込んだ活動を」と県外からも会員を迎え、市街地の生活者と中山間地の生活者との交流の場となっている。里山の恵みを味わいながら、事業として成り立つような林業活動を進めていきたいと考えている。

会の拠点施設であるドリームガーデン会の拠点施設であるドリームガーデン。
多目的炭窯・ドラム缶炭窯および木酢液の蒸留装置が設置されている。
各種イベント会場ともなる。

炭焼きでめざす月収60万

 2004年現在、会員は43名で、年齢は31~70才(平均は61才)。9つの事業部からなり、全ての事業部で体験教室を開催している。
  炭焼き事業部
  陶芸事業部
  山菜事業部
  キノコ事業部
  養蜂事業部
  林業事業部
  押し花事業部
  バイオテクノロジー事業部
  ボランティア事業部

 9つの事業部のうち、おもに炭焼き事業部について紹介する。
  炭焼き事業部では、林産物を利用するための核として炭窯を造成し、炭焼きを通じて林産物の新しい用途の研究及び炭焼き体験による人づくりを目的としている。炭焼きで「目指せ・月収60万」をスローガンに商品開発を実施しており、人気の飾り炭・煮沸処理した切り炭、蒸留木酢液等を製造している。布を炭化した柔らかな炭の開発にも成功した。現在は盆栽の松をそのまま炭化するための技術開発にも取り組んでいる。

    

炭焼き事業部では人気の飾り炭をはじめさまざまな商品を開発炭焼き事業部では人気の飾り炭をはじめさまざまな商品を開発

偶然が生んだ飾り炭の技術

 炭焼きを始めたのが、1992(平成4)年11月であった。農林業的生活が夢で自然環境型レストランの経営を計画して、脱サラし、店舗の建築の建設に必要な木材の伐採、そして製材、乾燥と手順を進めるうちに、柱や板にならない端材の多さにびっくり。この端材を利用するために炭窯を造成することになった。
 炭の利用については、料理や(炭焼きステーキ・バーベキュー)、店舗床下に置くことで、色々な効果(脱臭や調湿・マイナスイオン浴によるリラックス等)を期待して、木炭の備蓄と、山に堆積する枝・葉の有効利用を進めている。

    

 ある日、知人から炭材があるから取りにこないかと連絡があり、山に行くと、ナラ・カシ等の木と混じって桐の木があった。あまりにも見事な桐の木なので植樹の由来まで話し込んだ。知人の姉が嫁ぐときの嫁入り道具(タンス)にするため、姉が生まれたときに両親が植えたものだそうだ。この木を切ることになったのは、急速な時代の変化だと思った。
 桐の木を炭にするのは初めてであったが、昔なつかしい「カイロ」の燃料に桐の炭が使われていたことを思い出し、大事に焼こうということになり、炭化の状態が一番良い窯の奥に置くことにした。
 炭出しで桐炭と対面した。外見はナラやサクラと変わらない炭であったが、持ち上げると意外に軽いことにびっくりし、よく見ると、枝のあったところに穴があることに気付いた。穴の中を覗くと堆積した落ち葉が炭になっており、取り出してみるとクヌギの葉の炭であった。この堆積した落ち葉と木の穴の中での熱分解に偶然出会ったのがヒントになり、飾り炭の品質の均一化と量産に遭進した。

飾り炭でめざすは「癒し」「健康」「自然環境」

 そして、静岡県で開催された全国炭サミットに参加したときに、参加人数の多さに感激し、記念講演とパネルディスカッションに参加したことで、炭焼きの方向性を決めた。
 このころには、マツボックリ・パイナップル等の植物の炭化技術を確立していた。めざす方向は、この技術を活かして、「癒し」と「健康」および自然環境を守ることである。大量に飾り炭を焼くためには、炭窯の改造か、新しく造成するしかなかった。

 炭窯の造成を手伝い、飾り炭を焼く技術を継承する人がいないか探していたところ、偶然にも訪ねてきた若者がいた。神奈川県と北海道の若者3人が炭窯づくりと、炭焼き技術を習得したいと集まり、1ヶ月後、炭窯が完成し、量産体制が整った。
 また、平成13年には、三好郡内の炭の生産者が集まり、「三好郡炭の会」を結成した。統一した規格や、大量の需要にこたえるために、炭の生産者が連携を図り、新商品の開発や販路拡大に取り組んでいる。
 さらに、毎年、地元の池田中学生の農林業体験を受け入れ、炭焼き体験会を行い交流を図っている。

     

炭焼き体験をする中学生炭焼き体験をする中学生

今後は香浴や水虫撃退施設を予定

 新しい事業として、次の3つのことを計画中である。
①香浴サウナ:ハーブの効用を利用するもので、単に香りを楽しむのではなく、その香りに秘められた無限 の可能性に目を向けたものである。
②薬食料理:池田町に自生するハーブを利用した料理により、人の心を和ませ、楽しませるのと同時に、身体の痛みや怪我を癒し、食欲を増進させるという効用、効力を引き出し、健康を回復させる。
③水虫撃退施設:多くの水虫患者の悩み解消のために、地元の植物を利用して水虫を撃退する。地元のスギ葉100%の特製木酢液の足湯の後、木炭で燻した、スギの緑葉の燻煙で水虫を撃退する。

終わりに

 人は必ずしも自然の破壊者ではない。人が自然に触れて心が癒されるように、逆に人が自然を元気にさせることもできる。考えに賛同してくれる人と連携して、全国の山林に活力を取り戻すとともに、自然と共存できる人を育てていきたいと願っている。

(全国林業改良普及協会 月刊『林業新知識』2004年10月号より。記事データは掲載当時のものです。)
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