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そまびとたちの奮闘記

NPO法人信州そまびとクラブ。
山仕事をしながら、
林業のこれからの姿を提起します。

2008年3月31日

原木安定供給システム

森林の持つ多面的機能と言いますが、それに頼っているようでは林業の自立は有り得ないと内心思っていました。でもところ変われば事情も変わるものですね、木材生産で自立を果している人々が、多面的機能の保全のために立ち上がっている地域も日本にはあるのです。古い話題になってしまいましたが、大事な記録なので書いておきたいと思います。


 3月14日、長野県林務部信州の木活用課が主催した第2回原木安定供給システム研究会に行ってきました。これまで外国産木材を主に利用していた合板メーカーが、原料の調達先をどんどん国内へ切り替えており、長野県では、計画的に山の木を活かしてゆくための「次世代型県産材供給システム」というものの開発が進められています。
 今回は、この供給システム開発の進捗状況の報告に加えて、すでに活発な素材生産が行なわれている宮崎県から、素材生産業者がこれからの山造りを考えるために集まり設立したNPO法人ひむか維森の会の代表者を招き、その活動や宮崎の山の現状を聞き、最後に県内で活躍している素材生産業者を交えてのパネルディスカッションが行なわれました。


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残念ながら画像ではわかりませんが、パネルディスカッションで感じたのは「若さ」です。現場に近い人たちを引っ張り出した主催者の粋な、そして合理的なたくらみがよく伝わってくる人選でした。こういう場所に出てしゃべる、ということも、実は後日仕事の内容に影響してくるものです


 次世代型県産材供給システムは、システム構築のための県内業者へのヒアリング、プロセッサによる自動検知・集計・通信システムの開発、生産・流通情報管理システムの開発の3本だてで行なわれており、ヒアリングの集計結果もさることがなら、これまで人手で行なっていた現場の丸太生産量の把握と流通状況が、丸太短径の木部と樹皮の検知を自動化し、丸太にICタグをつけることで、リアルタイムで行なうことができるようになるというハード部分の仕上がりも、とても楽しみなものです。


 県林務部次世代型検討チームによる宮崎県の現状報告は、「九州・宮崎で起きていること」という、いささかショッキングなタイトルのもと、わが長野県とはまったく違う生産先進地の実態が紹介されました。
冒頭に書いた「ところ変われば…」の背景がこれです。
 H18木材統計によると、長野県の素材生産量は約26万7千立方m、宮崎県は126万8千立方mです。ちなみに森林面積は宮崎の方が長野の3/4程度です。木が売れて林業が自立できているから素晴らしい、と思いきや、裏側には多くの問題もある、というのが今回のいちばん重要な部分です。


 報告では、投機系の森林所有者の存在、山村の高齢化・過疎化による林地の売却、増える再造林放棄地等の問題が指摘されており、宮崎県には累積で2,000haもの未済地(伐りっぱなしのところ)ができてしまっているそうです。つまり、皆伐して売るだけ売って、あとはほったらかし、という山が年々増えているというのが問題化しており、NPO法人ひむか維森の会では「山の荒れ」を食い止めるべく業者自らが伐採搬出ガイドラインなるものを作り上げ、これから普及させてゆくのだそうです。森林の多面的な機能を拠り所に、さまざまな税金による手当てで食っている事業体が多い県とは、かなり様子が違うと感じました。


 森林県でありながら林業県ではない長野県。山からなかなか木が出てこない理由のひとつとして、よく働き手の不足が語られますが、今回の宮崎からの報告を聞いていて、単純に働き手の数だけが確保されても、絶対に山は良くならないことがはっきりとわかりました。

2008年3月25日

佐久林業士会

昨晩、佐久地域で活動する林業士の総会があり、私も準会員としてはじめて出席させてもらいました。林業士とは、県が実施する一定の養成研修を修了し、審査会を経て認定された地域林業の指導者で、県下には429名いるそうです。ちょっとややこしいのですが、私はこの林業士ではなく「地域の林業労働者の技術向上を図る指導者」という位置づけの林業技能作業士(通称グリーンマイスター)という立場で参加しました。


 信州そまびとクラブの職員からも林業士2名と技能作業士1名が出席し、新年度の活動案についてけっこう活発な発言が行なわれました。これまで行なってきた、環境フェアでの製材のデモや、小学生の林業体験のサポートなどに加えて、新年度はもしかすると結構おもしろい企画が飛び出すかもしれません。まだ案の段階なので公開は控えますが、楽しみにしていてください。

2008年3月24日

ガマの穂

昨日は久しぶりに村のバードウォッチングのつどいで、我が家の近所をゆっくりと歩きました。忙しさに追われ気づかずにいましたが、ふと足元に目を落とすとナズナが咲き始めているではないですか。今年の春は、これまで感じたことがないぐらい急激にやって来ました。


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 最後の水田が村からなくなってもう10年近く経過しました。同時に近頃では湿地だった場所の陸地化も進んでいるようで、かなり珍しくなってしまったガマの穂を見つけると、小学生にとっては最高の観察対象になります。画像は爆発するガマの綿毛に驚き、あわてて逃げる参加者の様子です。

2008年3月23日

カラマツ3千立方

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カラマツで建てている村の中学校。体育館はもうすぐ竣工です。体育館だけでなく校舎の構造材も木造で、一部には村有林の交換を行なっている根羽村のスギも使われます。


 さて中学ひとつ全部木造だと、どれぐらいの材木が必要でしょう・・・? この川上中学では3,000立方メートルのカラマツを使っているそうです。


 たとえば、近隣の森林組合が1年間に集めて出荷する木の量が、4,000から5,500立方ですから、この地域のカラマツ自給量からすれば、けっこうな量であることがわかるかと思います。ちなみに地元の森林組合ではこの中学の材の注文を受けて6,000立方の材木を集めたそうです。現場の人たちは一年間ほとんど材木採りにかかりきりだったのではないでしょうか。


 まずは公共建築がやって見せることで、地域の人々に根強いカラマツへの偏見を打ち破る。同時に、業者の技術力も育成されます。地産地消を真剣に考え行動するとこうなる、という好事例のひとつだと思います。

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 体育館の工事は先行していて、入学式に間に合うかもしれません。ここで学ぶウチの娘が羨ましい。


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 こちらは校舎の進捗状況です。

2008年3月21日

一進一退

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一気に暖かくなったのに、冬鳥たちがモタモタしているので不思議に感じていましたが、彼らはこれをちゃんと感じていたのですね。里では「~♪ なご~り~ 雪~も ♪~」なんて、のどかな歌になるかもしれませんが、標高1000mを超えるとたちまち冬の再到来となります。それでも、イヌザクラはきちんと生物暦をきざんでいます。風邪をひくなよ。


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2008年3月16日

炭焼きを守ることは日本を守ること

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落語家ではありません。先日もお知らせした松本で炭を焼いている原伸介さんの勇士です。3月8日、東大学士会館分館で行なわれた国民森林会議総会の記念講演 「炭焼きを守ることは日本を守ること」 圧倒的なパワーをいただいて帰路につきました。このスタイルも伊達じゃないんです。そこには、彼が和服を身につけることによって、和服につながる大勢の職人たちが食ってゆくことに貢献する、という深い思想が流れています。


 子供の頃、将来何になりたいかという問いに「仙人」と書いて笑いものになった、というお話から始まり、約1時間30分、興味のつきないお話しばかりでした。私自身、小学校時代の山河での原体験というものの重みがずっと気になっていたものですから、原さんの仙人志望の要因となった、裏(里)山喪失事件とご本人の現在の在りように深い関係がある、という分析には、首が脱臼するぐらい何度も頷いてしまいました。


 講師だけでなく、聴衆もハイレベルな講演だったため、聴講後の皆さんの感想からも宿題をいただいてきました。テーマは「技術者の思いやり」です。自分にはもともと具わりそうもない大切な部分、大きくえぐれている部分を見られたようで、あれからずっと考えています。


 流されてがちの日々に「もっと考えろよ」と言ってもらえることの幸福。昨日の朝から、きわめてかすかなのですが、遠い一点から途切れることのない信号音が聞こえるような気がしています。軌道修正のチャンスをくださった原さんと、国民森林会議の皆さんに感謝しています。

2008年3月12日

おのぼりさんのつぶやき

 東京へ出かけることは決死のイベントである。
 目的地を地図で確かめ、地下鉄路線図を確認し、乗り換えのだんどりを反復する。次に、この山間地から出て、目的地に間に合う鉄道のダイヤを調べ、当日の出発で良いかどうかも確認しなければならない。その目的地が私と同世代の東京のビジネスマンならば、目隠しをしてでも歩きそうな都心の官庁街のようなところになればなるほど、下調べは緊張を伴い、精密さを増す。


 この作業をしていてふと思った「もしも自分が若い頃のまま東京に暮らしていたらどうだったろう。これほどの大仕事ではないはずだ。アルバイトで地下鉄を多用していた頃は、23区内の路線図を掌握していたではないか?」 それらの場所へ出かけるために、今ではいつも、ただそこにたどりつくためだけに30分以上の時間を費やし準備をしなければならないのである。


ここから考えは一挙に飛躍する。


 これこそが、中央と地方の温度差なのではないか。自分にとって東京は遠い異世界としてのみ存在している。高速道や新幹線が完備され、情報インフラのマジックで近くなった物理的な距離に惑わされてはいけない。むしろ心と心の間の距離は、人々の往来が不便だった頃よりも比べものにならないぐらい離れているのではないか。ところが、自分が暮す村の人々に影響する多くの政策や制度が、その異世界で創造され発信される。


 数年前に流行った映画にこんな台詞があった「事件は会議室で起こっているのではない、現場で起こっている・・・」。月並みな表現になってしまうけれど、このギャップを埋めることのできる何かを工夫しなければいけない。それがないからこそ、未だ多くの人たちに、この中山間地のかけがえの無さが伝わらないのだ。そしてその伝わらないことの弊害が、実は限界都市に暮す人々の生命の危機に直結している。
 

 自分が登っている枝を、幹のほうから切り離そうとする愚行。すべての模式図が、大都市を中信として、地方に伸び、そして枝先に村々があるような形で描かれるけれど、地方都市や中山間地に蓄積され、はぐくまれているものこそ、国家の幹を形成している基礎なのであり、都市は危うい枝先にかろうじて生きているのではないだろうか。

2008年3月 6日

今週末は東京です

今、国民森林会議が行う提言づくりの手伝いをしています。うっかりして、提言がどこのどのような人々の目にとまることになるのかを教えてもらっていないのですが、過去の提言の内容からして、この国の林野行政を方向付ける中枢の皆さんが、ひとつのターゲットになっていることがわかります。今週末はこの国民森林会議の総会で、久しぶりに東京へ出かけます。


 どんな提言が行われているのかと言うと、近いところでは2004年度の「森林・林業・木材利用の担い手」、や、2006年度の「新たな森林・林業基本計画の検討」があり2006年度版はホームページからその概要を見ることもできるようになっています。そして手伝いに参加させてもらったのは、今おおづめになっている2007年度版で、再び担い手問題に関する提言をするにあたり、林業の現場で働く者としての意見も活かしたいということで声をかけていただきました。2004年度が、川上から川下まで、生産者から消費者まで全体にわたる担い手について検討したものだったのに対し、今回は川上側の森林・林業の技術者に絞った担い手問題を扱っています。


 提言委員であることに加え、松本で炭を焼きながら大活躍している、原伸介さんの講演も聞くことができるので、今週末土曜日の午後の総会には何としても出席しなければなりません。なお、原さんの講演は一般公開になっていますので、興味のある方は国民森林会議のホームページにある連絡先に問い合わせてみてください。

2008年3月 2日

盛会でした

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昨日、地域の林業を考える会を開催しました。申し込み制ではなかったので、何人ぐらいの人が来てくれるか不安だったのですが、ふたをあけてみてビックリ。70人を軽く超える人たちが参加してくださり、スタッフは資料の不足に嬉しい悲鳴をあげました。


 山に関心のある人が多いのだな、ということに大きな期待のようなものを感じたのと同時に、アンケートを見ると地域林業や国全体の林業を俯瞰した情報が、ちっとも森林所有者に伝わっていないのだなという危機感を強く持ちました。地域の林業者、そして林業NPOのメンバーとしてやらなければならないことがたくさんあります。


 開催予定の記事を掲載してくれた地元の新聞の援護射撃のおかげで、県内各地から参加してくれた同業の人たちから、講師の東大大学院の酒井教授にたくさんの質問が寄せられ、皆さん、明日からの山造り、道造りに役立つものを持って帰ってくれたのではないでしょうか。後援してくださった長野県佐久地方事務所の皆様、会場提供や村長さんから挨拶までしていただいた南牧村役場の皆様、協力をしてくださった多くの皆様にお礼申し上げます。どうもありがとうございます。


 夜はそまびとスタッフと仲間たちで酒井先生を囲み、先生持参の特製あわもりを楽しみつつ大いに盛り上がりました。はじめて泊まった鹿の湯。最高でした。

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そまびとたちの奮闘記 「そまびと」とは「きこり」のこと。現代のそまびと=技能職員たちが起業し、模索しはじめました。

お知らせ

要林産のホームページ somabito.jp をどんなものにしようか、現在思案中です。なにか良い案があったら、ぜひコメントに書き込んでください

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