HOME > 森林所有者のための初級講座 > 森林の相続のための基礎知識

森林所有者のための初級講座

森林の相続のための基礎知識

1 所有する森林を考えた相続とは?

森林づくりには長い時間を要します。したがって、一代で森林づくりの全てを完成させることは不可能だと言ってもよいでしょう。せっかく素晴らしい森林づくりを進めていても、相続の仕方次第では、森林づくりにとって大きなマイナスを生むことも考えられます。
その時になって後悔しないように、また残された家族の間でトラブルが起こらないように、生前から相続対策をしておくことが大切です。また、これまで大切に育ててきた森林を崩壊させてしまいかねない相続税への対策も必要です。大面積の所有者でなくても、都市に近い森林などでは、持続的な林業経営の大きな障害となっています。
ここでは、森林の相続のために知っておきたいことについて、基礎的な内容について、紹介します。具体的な事例については、弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。

2 相続とは?

●相続とは
相続とは、ある人の財産や権利義務が、その人の死亡によって、一定の身分関係にある人(配偶者や子など)に受け継がれることです(民法882~1044条)。

●相続人と相続分
・法定相続人と相続順位
第1順位直系卑属もしくはその代襲者
第2順位直系尊属
第3順位兄弟姉妹
配偶者は常に同順位で相続人となる。

・相続分
配偶者と各相続人の相続分
直系卑属と配偶者
配偶者2分の1
直系卑属2分の1
直系尊属と配偶者
配偶者3分の2
直系尊属3分の1
兄弟姉妹と配偶者
配偶者4分の3
兄弟姉妹4分の1

※直系尊属血族の中で自分より先の世代にある人(父母、祖父母など)。
※直系卑属血族の中で自分より後の世代にある人(子、孫など)。

3 遺言とは?

遺言は一般常識の上では「人が死後のために残す言葉」ですが、法律的には「ある人が生前になした相手方のない単独の意思表示に対して、その人の死後に効力を認め、その実現を確保する法律制度」のことです。

●遺言のすすめ
遺産分割を被相続人が指定していない場合は、法定相続通りに分割するか、相続人同士の話し合いで決めることになります。しかし、話し合いがつかなかったり、遺産分割したがために、森林が細分化されて林業経営が成り立たなくなることも…。このようなことが起こらないように、きちんと遺言書を書いておくことが大切でしょう。

●遺言の効果
・遺言は法律によって保護される
遺言内容は、相続発生と同時に法律によって厳重に保護され、協議分割成立以外、相続人は遺言書に拘束されます。なお、遺言は、満15歳以上で、正常な判断能力をもっている人であれば誰でも行えます。

・財産の処分に関して指定できること
遺言によって、遺産の一部を特定の人や団体に遺贈できます。また、遺言で公益を目的とした財団法人を設立するために寄付したり、銀行に遺産を預けて運用を依頼し、一定の目的のために遺産を使うように指定することも可能です。
特定の相続人に対して法定相続分とは異なる割合を指定したり、あるいは、森林は長男にその他の財産は長女にというように、遺産ごとに相続人を指定することもできます。また、相続分の指定と遺産分割方法の指定を第三者に委託することもできます。さらに、5年を超えない範囲であれば、遺産の分割を禁止することも可能です。

4 遺言による遺産分割

●遺言執行者が遺言の内容を実現する
遺言書の内容を実行することを遺言の執行といい、遺言執行者が行います。なお、遺言執行者には、特別な資格は必要ありません。遺言書で指定されていればその人が就任します。指定された人がいない場合は、家庭裁判所に選任を依頼します。

●遺言による遺産分割の指定は法定相続分に優先する
遺産分割の際に、遺言書があれば、遺言書に書いてあるとおりに分けます。これを指定分割といいます。

●法定相続分の2分の1は遺留分
遺留分(※)とは遺言をもってしても侵すことのできない相続人の相続分です。兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の額は、直系尊属のみが相続人である場合に被相続人の財産の3分の1、その他の場合は被相続人の財産の2分の1です。
※遺留分:法定相続人が最低限相続できる額。

●遺留分の放棄は生前に行うことも
被相続人の遺志を尊重したい、他の相続人の相続分を多くしたい場合は、遺留分を放棄することができます。あらかじめ遺留分を放棄する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。

5 遺言の方法

●口約束は遺言になるか?
遺言書と遺言は、どちらも家族に残すものですが、法律上は異なるものとして扱われます。たとえば、口約束や病床で話したことは、遺言として扱われません。また、夫婦など複数の人が共同で書いた遺言書は無効です。
法的に認められる遺言には、
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別遺言
の4つがあります。
なお、自筆証書遺言と秘密証書遺言については、相続発生時に遺言書を開封せずに家庭裁判所で検認を受けなければなりません。

●自筆証書遺言
自筆証書遺言は、その名のとおり自分で書く方法です。自筆で内容を書き、日付を入れ、署名・押印します。なお、ワープロで打ったり、代筆されたものは無効です。書いた後は、自分で保管します。後日、訂正したい場合は、訂正できます。

●公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人に書いてもらう方法で、2名以上の証人が必要です。遺言者が遺言内容を公証人に口頭で告げ、公証人が筆記します。公証人が記載内容を読み上げて、遺言者と証人が内容に間違いがないと認めると、それぞれ署名・押印(実印)します。公証人は、遺言書が法律に従って作成されたものであることを付記して署名・捺印し、公証人役場で保管します。なお、公正証書遺言の場合、家庭裁判所の検認を受ける必要がありません。

●秘密証書遺言
秘密証書遺言は、公正証書遺言と自筆証書遺言のちょうど中間的なもので、自分で遺言を書いて封印し、2名以上の証人とともに公証人役場で本人が書いたものであることを確認してもらう方法です。ワープロで打ったり、代筆してもらったものでも、かまいません。秘密証書遺言は、自分で保管します。

●特別遺言
遺言者が特別な事情にあって先ほど述べた方式(普通方式)がとれない場合には、特別方式と呼ばれる方式をとることができます。

6 相続税の申告と納税

●相続するかどうかは3カ月以内に決める
遺産をそのまま相続することを単純承認といいます。単純承認では、プラスの財産とマイナスの財産(借金)を同時に相続することになります。相続の意思表示は、自分が相続人になったことを知ったときから3カ月以内にしなければなりません。
マイナスの財産の方が多いと予想される場合には、限定承認という方法をとることができます。これは、相続財産の範囲でマイナスの財産も承継する方法です。限定承認は、全相続人が財産目録を添えて家庭裁判所へ申述します。
マイナスの財産の方が多いと分かっている場合は、相続放棄を選ぶこともできます。この場合、相続人は相続放棄申述書を相続の開始から3カ月以内に、家庭裁判所に提出しなければなりません。受理されると、原則として取り消すことはできません。
限定承認もしくは相続放棄の手続きを取らないで相続開始を知った日から3カ月の期間を経過したときは相続を単純に承認したものとみなされます。

●基礎控除とは?
相続税は、相続や遺贈によって財産を取得した人が払わなければならない税金です。
相続税額は、各相続人の財産取得額をもとに算出するのではなく、遺産全体の正味の遺産額(相続税法上は課税価格の合計額)をもとに算出されます。
この額が、相続税の基礎控除額(課税最低限※)より少ない場合は、相続税は課税されませんし、申告の必要もありません。上回った場合は、その額が課税対象となります。
※基礎控除額:5000万円+1000万円×法定相続人の数で算出します。

●相続税の計算方法
相続税額は、正味の遺産額の計算→相続税総額の計算→各相続人の相続税の計算という流れで計算します。
相続税には、配偶者の税額軽減制度のほか、贈与税額控除、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除などの軽減措置があります。たとえば、配偶者の相続分に関しては、相続税額から税額軽減額が差し引かれる制度が利用できます。これは、配偶者の税額軽減制度といい、配偶者の相続分が1億6000万円以下、もしくは法定相続分以下であるならば、納付すべき税額は算出されません。

●相続税の申告
相続税は、遺産を取得した人すべてが納めるものではありません。また、未成年者控除や贈与税額控除などの各種税額控除を受けた人は、申告する必要もありません。相続税を申告する義務が生じるのは、正味の遺産額が基礎控除の額を超えかつ納付すべき税額が算出される場合だけです。ただし、配偶者控除については、申告しなければ控除を受けることができません。

●申告と納税は10カ月以内に
相続や遺言で遺産を取得した人(相続人)が行う手続きには、それぞれ期限が定められています。相続放棄や限定承認をする手続きは、相続人が相続が開始したことを知ったときから3カ月以内に行います。また、相続人が被相続人に代わって行う所得税の申告(準確定申告)は4カ月以内。さらに、相続税の申告と納付や延納・物納の申請は10カ月以内に行わなければなりません。
こうした手続きが期限内に行われない場合、税務署は独自の調査をして税額を通知してきます。これを決定といいます。法定処分が行われると、無申告加算税がかかり、税額が増額されてしまいます。

●申告に必要な書類は?
相続税の申告書には、15種類あり、その中から必要な書類を選びます。申告書の内容を証明するための書類も必要となります。配偶者控除を受ける場合は、戸籍謄本と遺産分割協議書を必ず提出します。
申告書は、相続人がそれぞれ提出するのではなく、1通だけ書いて、それに全員が署名・捺印すればいいことになっています。申告書の提出先は、被相続人が死亡した時に住んでいた住所地を管轄する税務署です。
申告書を提出した後で、記載内容の誤りに気づき、納めた税額が実際の額より少なかった場合には、正しい申告書を再提出します。これを修正申告といいます。
もし、修正申告をしないで税務署から不足を指摘されて、更正という手続きがとられると、過少申告税が課されます。悪質な場合、刑事罰が課されることもあります。また、納めすぎていたときは、法定納期限から1年以内であれば、減額してもらうための更正の請求をすることができます。

●相続税は延納できる
相続税は、相続開始後10カ月以内に納めなくてはなりません。その期間に納めることが難しい場合は、申告期限までに延納申請書を税務署に提出し、許可を受けて、分割で納付することができます。これを延納といいます。また、延納する場合には、利子税が加算されます。

●相続税の物納とは?
延納の他、取得した遺産で相続税を納める物納という手段をとることもできます。この場合、納付期限までに物納財産目録、不動産の登記簿謄本、公図、所在図、地積測量図など必要書類を添えた物納申告書を提出し、許可を受けなければなりません。なお、物納の許可を受けた後で、金銭による相続税の納付が可能になった場合、1年以内であれば、物納を撤回することもできます。

●森林の相続税評価
森林の相続税評価は、林地と立木に分けて評価されます。純山林や中間山林(※)は、固定資産税の評価額に、国税局が定めた倍率を掛けた価額が評価額となります。
市街地山林(※)の場合は、その森林を宅地にしたときの宅地価額から宅地を造成するときの費用を引いて算出する宅地比準方式という方式で評価します。
※中間山林:市街地付近などにある森林
※市街地山林:市街地区域などにある森林

●立木の評価
立木は、国税局が定める標準価格(1haあたり)に、立木度(※)と地味級(※)、地利級(※)を掛けあわせて評価します。
※立木度:森林の植栽の密度を数値化したもの。
※地味級:土地がどのくらい肥えているかの度合い。
※地利級:立木を搬出するときの便利さの度合い。

●保安林の指定を受けた森林は
森林法で、保安林の指定を受けている森林は、固定資産税は非課税ですから、固定資産税の評価額をもとに評価することは不可能です。この場合は、近隣の森林の固定資産税の評価額をもとに評価します。
なお、保安林の場合、林地、立木ともに伐採が制限されている度合いなどに応じて控除割合があり、軽減されます。くわしくは、最寄りの都道府県事務所などにお問い合わせください。

参考資料:山の法律相談室/(社)全国林業改良普及協会
参考資料:林業・木材業のための税知識入門/(社)全国林業改良普及協会

森林所有者のための初級講座 TOPに戻る