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トップページ > 農山村の背景情報 > 山で生きる・森をつなぐ仕事<part.3>

農山村の背景情報

12 理想郷のタネは足元にある・福田裕人さん(丸太じゅく代表/宮崎)

 

12_福田さん.jpg 岩を組んだ壁で囲まれた円形の構造物は、白炭の窯だ。内径約3・5m壁の高さは2m近い。まだ天井ができていないので、まるで古代の祭儀場か何かのように見える。
「この地域は『宇納間備長炭』の産地で、炭といえば白。僕は山仕事で出る雑木を活用したくて、炭焼きに辿り着いたんですが」と福田さん。傍らで、炭焼きの師匠が重機を操る。「この窯は原木で8t程入るね。人の窯は自分の以上に慎重に作るよ。窯次第で、炭の出来は全然違うから」。窯の建つ約2000坪の土地には、将来、作業小屋や宿舎を建てる予定だ。夢に描いているログ・スクールの青写真は福田さんの頭の中にある。
 地元の出身だが、当初、山に関心はなかった。故郷からなるべく離れた大学を出、卒業後は海外放浪の旅に明け暮れた。中でもカナダのログ・スクールで学んだログハウスの建築技術をはじめ、山で暮らす智恵などに感銘を受ける。一時期はカナダへの移住まで考えたが、結婚を機にUターン。4年前から林業家の叔父について山仕事に従事している。
 子供が生まれると、時の尺度に対する考え方が変わってきた。「僕は眼前の理想郷を求めて世界中旅をしてきた。でも重要なのは、今どうあるか以上に、100年、200年先にどうありたいかという社会のビジョンだと思えてきたんです。そう考えたとき、理想郷の種は足元にあることに気が付いたのかな」と福田さん。
 地元のスギ丸太をログのキットとしてヨーロッパに輸出するのが夢だ。「日本の風土にはログハウスは似合わないと思うけど、海外の需要は確実にある。ログスクールを作り、デザインも含めて木材に丁寧に付加価値を付ける地域産業になれば、地元の山を循環的に生かす手段になると思うんです」。
 夢の実現のためにも、逃げずに正面から山に向き合い、自然の声に耳を傾けるつもりだ。(絵と文・長野亮之介)