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森林所有者のための初級講座

森林所有に関わる制度

1 森林・林業基本法

「森林・林業基本法」とは、森林・林業政策の憲法のような「宣言法」と呼ばれるものであり、森林・林業に関する「政策の理念」と「施策の方向」について示した法律として、以前からあった「林業基本法」を改正して平成13年6月に制定されました。
昭和39年に制定された「林業基本法」は、高度経済成長期の膨大な木材需要を背景に、木材の安定供給のための林業生産の振興が主な目的としていましたが、近年の国産材の自給率の下落、国民の森林に対する期待の多様化にそぐわなくなっていました。そのため、木材生産のほか、国土の保全や水源のかん養、地球温暖化防止などの森林の多面的機能を発揮させることを基本理念として「森林・林業基本法」が制定されたわけです。この法律では、新たに森林所有者の森林の整備・保全に関する責務を明記しています。

※第9条「森林所有者または、森林を使用収益する権原を有する者は、基本理念にのっとり、森林の有する多面的機能が確保されることを旨として、その森林の整備及び保全が図られるように努めなければならない」

詳しくは・・・
林野庁http://www.rinya.maff.go.jp/index.html

2 森林・林業基本計画

「森林・林業基本計画」とは、「森林・林業基本法」を受けて政府が計画的に施策を進めるための施策の方針と目標を明示するために策定する計画のことをいいます。
特に注目すべき点として、わが国の森林を「水土保全林」「森林と人との共生林」「資源の循環利用林」の3つに区分して森林の機能を充実させるための整備を進めることとしています。

○水土保全林
水を育み、災害を防ぐといった水土保全機能を発揮することが期待される森林。(伐期の長期化、伐区の分散、複層林施業等)
○森林と人との共生林
貴重な自然環境を保全したり、森林レクリエーションや環境教育の場としての活用が期待される森林。(天然林択抜施業、広葉樹の育成等)
○資源の循環利用林
木材生産のために森林を伐採し、収穫したあとに苗木を植え保育を行い、永続的に木材を安定的に生産する森林。(木材の需要に応じて多様な施策を推進)

詳しくは・・・
林野庁http://www.rinya.maff.go.jp/index.html

3 森林法

「森林法」とは、「宣言法」として理念や政策方向を示す「森林・林業基本法」に対し、「実体法」として森林計画や保安林等の森林に関する手続規定や罰則規定などを定めた法律です。

詳しくは・・・

 

「森林の所有者届出制度」が平成24(2012)年4月からスタートします

森林法改正により、「森林の土地の所有者届出制度」が創設され、平成24年4月から施行されます。
この制度は、森林所有者を把握するため、売買だけではなく、相続等によるものも含めて、権利の移転があった場合には、面積によらず市町村長へ事後届出が義務づけられるものです。
以下は、林野庁作成の文書、資料です。

・・・・
平成23年4月の森林法改正により、平成24年4月以降、森林の土地の所有者となった方は市町村長への事後届出が義務付けられました。

■届出対象者
 個人・法人を問わず、売買や相続等により森林の土地を新たに取得した方は、面積に関わらず届出をしなければなりません。
 ただし、国土利用計画法に基づく土地売買契約の届出を提出している方は対象外です。

■届出期間
 土地の所有者となった日から90日以内に、取得した土地のある市町村の長に届出をしてください。

■届出事項
 届出書には、届出者と前所有者の住所氏名、所有者となった年月日、所有権移転の原因、土地の所在場所・面積とともに、土地の用途等を記載します。
 添付書類として、登記事項証明書(写しも可)または土地売買契約書など権利を取得したことが分かる書類の写し、土地の位置を示す図面が必要です。

※詳しくは、市町村や都道府県の林務担当までお問い合わせ下さい。なお、上記の内容は平成23年12月段階の検討内容です。

届出書の様式、どのような場合に届出が必要かなどは、Q&A(PDFファイル)をご覧ください。
<PDFファイル「Q&A」>

4 森林計画制度

「森林計画制度」とは、健全な森林を計画的に維持・造成するため、森林法に基づいて国、都道府県、市町村の連携により森林・林業の長期的・総合的な施策の方向と森林整備の目標、森林施業の指針等を定める制度です。国が策定した森林・林業基本計画を受け、国レベルの全国森林計画、都道府県レベルの地域森林計画(民有林の場合)、個人レベルの森林施業計画と体系的なものとなっています。

【森林計画制度の流れ】
○全国森林計画(農林水産大臣)
国の森林関連政策の方向、地域森林計画等の規範
○地域森林計画(民有林の場合・都道府県知事)
都道府県の森林関連施策の方向、伐採、造林、林道、保安林の整備の目標等 (国有林の場合は「国有林の地域別の森林計画」)
○市町村森林整備計画(市町村)
市町村が講ずる森林関連施策の方向、森林所有者等が行う伐採、造林の指針等
○森林施業計画(森林所有者等)
森林所有者等がその所有または経営する森林について自発的に作成する具体的な伐採・造林等の実施に関する5カ年計画

詳しくは・・・
林野庁http://www.rinya.maff.go.jp/index.html

5 森林施業計画

森林計画制度の中でも「森林施業計画」は、森林所有者の方に最も関わりが深いものです。森林施業計画とは、森林所有者等が自主的に森林づくりについて40年以上の長期の方針を定めた上で、造林や保育、間伐、伐採といった森林施業の5カ年計画をたて、市町村の長などの認定を受けることができる制度です。対象となる森林は30ha以上の団地的まとまりのある森林となります。小規模森林でも近隣の森林所有者とあわせて30ha以上まとまった森林が確保できれば共同でたてることが可能です。

●計画づくりの主体
森林所有者の方となります。この他に森林組合、素材生産業者、個人が森林所有者と5年以上の「森林の施業や経営の委託契約」を結び森林所有者に代わって森林施業計画を作成し認定を受け、森林の施業に取り組むことができます。不在村森林所有者の方など直接経営に関われない方などは後者に委託するという財産管理の形も可能になります。

●対象となる森林
対象となる森林は30ha以上の団地的まとまりのある森林となります。小規模森林でも合計30haを超えるように近隣の森林所有者の方々が共同で参加しても構いません。
また、計画づくりの委託を受けた場合も、近隣の森林30ha以上まとめて委託を受けることができれば、単独で森林施業計画をたてることができます。
 

●計画づくりの流れ
簡単に説明すると下記のような流れになっています
(1)森林の現況の確認
(2)共同で森林施業計画を作成する場合、意見調整
(3)計画書の作成
(4)計画を市町村の長に提出
(5)認定
(6)計画に従って実行
(7)計画の進捗状況の報告

●優遇措置
・税制
所得税、相続税、法人税、特別土地保有税に優遇措置があります。
・金融
農林漁業金融公庫資金(林業基盤整備資金、林業経営育成資金)
林業改善資金(団地間伐促進資金)にて優遇措置があります。
・補助等
森林整備地域活動支援交付金については、森林施業計画の認定を受けた森林で一定の要件を満たした場合、市町村長との協定に基づいて実施される森林の現況調査などに対して交付金が交付されます。
このほか、造林関係補助事業については、森林施業計画に従って行う施業に対して実質的な助成水準が優遇されます。

●詳しくは・・・
所有する森林がある市町村役場、最寄りの都道府県林業事務所の森林計画担当までご確認下さい。

参考資料:「森林施業計画ガイド」/(社)全国林業改良普及協会
最新の情報は・・・
林野庁http://www.rinya.maff.go.jp/index.html

6 保安林制度

森林には、水源のかん養、山地災害の防止、レクリエーションの場の提供などをはじめ、多大な公益的な機能を果たしています。こうした森林の中で特に重要な役割を果たしている森林を国や都道府県が森林法に基づいて保安林に指定し、伐採を制限したり、適切な施業を行う等を通じて森林の期待される働きが維持できるように管理をしています。
保安林の指定を受けると、いくつかの行為の制限を受けることになりますが、それを補完するための優遇措置も用意されています。概要については以下の通りです。

●保安林の種類
水源かん養保安林、土砂流出防備保安林、保健保安林をはじめ17林種があります。

●制限について
指定された森林が保安林としての働きを果たすために、最低限守られなければならない森林の取り扱い方法「指定施業要件」が定められています。これは各保安林種により(1)伐採の方法(禁伐、択伐、皆伐可)、(2)一度に伐採できる面積や材積などを定めるものです。さらに立木を伐採した後、伐採跡地に植林する義務が課せられることがあります。また、いざというとき伐採して収入を得たい場合、指定施業要件等の条件を満たしていれば可能です。この場合は都道府県知事に申請して許可を得ることが必要です。

●優遇措置について
・保安林の土地について固定資産税、不動産取得税、特別土地保有税は課税されません。相続税や贈与税については控除措置があります。
・伐採方法が禁伐もしくは択伐など厳しい制限がかけられている保安林は、立木資産の凍結について損失の補償が受けられます。
・造林補助金や農林漁業金融公庫について優遇措置があります。
・山崩れの防止などの重要な働きをしている森林については、必要に応じて全額公費負担による治山事業での森林整備が行われます。

●詳しくは・・・
都道府県の保安林係にお尋ね下さい。

参考資料:「保安林のしおり」/(社)全国林業改良普及協会
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林野庁http://www.rinya.maff.go.jp/index.html

7 林地開発許可制度

森林法に基づく民有林の開発行為の許可制度のことをいいます。1haを超える森林の開発は、この制度の手続きに従って、都道府県知事の許可を受けなくてはなりません。

●対象となるケース
・地域森林計画対象の民有林を1haを超えて土や石を掘り出したり、林地以外に転用するなど、土地の形質を変える行為。
・道路を造成する際、幅3m、面積が1haを超える場合。
・森林所有者などが共同で開発を行う場合も、全体の開発面積が1haを超える場合。
・何年にもわたって開発を行う場合、最終的に全体の開発面積が1haを超える場合。

●4つの許可の基準
・災害を防ぐ働きの影響
・水害を防ぐ働きの影響
・水源をかん養する働きへの影響
・日常生活の環境を守る働きへの影響

●最低限のルール
・森林率
開発地周辺の環境が急変しないように開発の目的、周辺の環境や土地利用に応じて森林率(開発面積に対して残す森林の割合)が定められています。
・森林の配置
森林はある程度まとまっていなければ機能を発揮できません。そのために森林の配置の仕方は開発の目的、規模によって定められています。

●監督処分と罰則
無許可での開発行為や違反行為や不正な手段で開発を行った場合、森林法に基づき開発行為の「中止や復旧命令」の監督処分を受け、場合によっては罰則が適用されます。

●詳しくは・・・
1ha以上の森林の開発を計画している場合は、開発を予定している森林がある都道府県庁の林地開発許可業務担当課にご相談下さい。

参考資料:「林地開発許可制度」/(社)全国林業改良普及協会
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