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トップページ > 農山村の背景情報 > 山で生きる・森をつなぐ仕事<part.3>

農山村の背景情報

04 木は余すところなく使いたい・大泉久繁さん(大泉林業所2代目/徳島)

04_大泉さん.jpg 大泉さんが最近手掛けた約2町歩の皆伐現場は、痩せた尾根から深い谷に向かう急傾斜地。伐るにも出すにも高い技術が要求されるため、長らく放置されていた林分だ。おかげで大径木のスギが相当数残っていた。中には樹齢175年の木も。「多分、実生の天然ものやろうけどね」と大泉さん。搬出の際は、スギばかりでなく、広葉樹などもできるだけ降ろす。木は長い年月を経て山に育まれた貴重な資源。余すところ無く使いたい。それが大泉さんの方針だ。
 もともとは余り山に興味はなかった。工業高校卒業後、土木関係の仕事に短期間就いていたが、当時はまだ材価も悪くなく、自然な流れで家業にUターン。父から山を学んだ。やがて右肩下がりの材価の下落。何とか材に付加価値をつけたい一心が、今の考え方に繋がっている。
 針葉樹でも、真っ直ぐなものだけが評価される現状には違和感を持っている。「どんなに曲がってようが、適所に使えば生かせます。木の個性を生かしきれないのは、使う側の問題じゃないかな」と大泉さん。素材生産の仕事と平行して、6年前からログハウス建築を手掛けている。地元林研グループ「匠の会」の仲間である大工さんたちとチームを組み、現在までに6棟を建てた。今年から住み始めた自宅も、もちろん自分の仕事だ。100年生のヒノキを組んだ建物で、開口部が広く、ログの圧迫感をあまり感じない。前掲の言葉を裏付けるように、二股のヒノキがデッキの柱に巧みに使われていた。
 一昨年からは、インターネットで薪の販売を始めた。担当は長男の太郎さん。こちらは広葉樹を生かすための方策だ。こうして山元から出る資源をなるべく無駄にせず、消費者の手元に届くまでの流れを総合的に手掛けることが、大泉林業所の目標だ。「それもこれも、仲間と家族に助けられてできる仕事やね」。(絵と文・長野亮之介)

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